プロローグ

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……何で私の席で寝てるの? そんな疑問を抱きながら教室に足を踏み入れた時、誤ってドアに肩をぶつけた。 ガンッ、と静かな教室に不釣り合いな大きな音が響く。 「痛っ…!」 意外と痛くて、痛みを我慢しつつ肩を押さえる。 「んん……?」 すると、さっきの音に気づいたのか、太陽の光を反射してキラキラと輝くその頭が動いた。 彼は顔を上げて、寝惚け眼でこちらを見る。 その顔立ちはあまり綺麗すぎて、思わず見惚れそうになる。 「ふあ……さっきの大きな音って、何の音?」 欠伸を噛み締めながら、彼は私に尋ねる。 こうやって面と向かって話すのは初めてかもしれない。 「ど、ドアにぶつかっちゃって……ごめんなさい。早川くん、寝てました?」 「寝てた奴に気なんて遣わなくていいって。」 そう言って、彼は白い歯を見せながら笑った。 ――彼の名前は、早川 光輝(はやかわ こうき)という。 早川くんは、整った容姿と、愛想のいい性格で男女どちらからも人気がある。 しかも同学年からだけでなく、先輩や後輩からも人気。 いわゆる、学校の有名人だ。 「……あの、早川くん、部活は…?」 早川くんは、バスケ部に所属している。 その腕は確かなものらしく、一年生の頃からレギュラーだと聞いた。 次のバスケ部のキャプテンの座は確実らしい。 そんな彼が何で教室で、しかも何で私の席で寝てるんだろう。 「あー、今日はちょっと膝が痛くてさ。大事を取って休養。 それで今日は友達と帰ろうと思って、教室で待ってんだよ。」 うん、と伸びをする早川くん。 私が、君が退いてくれるのを待っていることなんて、全く気づいてないんだろうな。 .
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