第3章

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朝になった。 窓から射し込む日差しはひどく眩しくて、今日は晴れていることが分かる。 私はむくっ、と起き上がって、目を擦った。 ――あの後のことは、あまり覚えていない。 気づいたら、ベッドで横になっていて。 あれからお母さんとは言葉を交わさなかった。 「早く支度しなきゃ……。」 正直、お母さんと顔を合わせるのが怖い。 あんなことを聞かれるなんて、思わなかった。 ……ううん、違う。 聞かれるのをずっと、避けてたんだ。 『美雨ー? まだ寝てるのー?』 一階からお母さんに呼ばれる。 いつもと何も変わらない、お母さんの声だ。 「大丈夫、起きてるよ。」 ドアを開けて答えると、 『朝ご飯できてるから、早く降りてらっしゃい。』 と、優しい声音で返ってきた。 支度をしようと、とりあえずベッドから降りると。 「あっ」 布団が引っ掛かって、カシャン、と何かが落ちた音がした。 ベッド下に手を入れて探ると、指先にヒヤリとした感覚。 それを引っ張り出すと、それは朝日を浴びてキラリと反射して。 銀色に輝くのは、ミニチュアのバスケのシューズだ。 .
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