第3章

3/32
前へ
/403ページ
次へ
……私の、宝物。 ミニチュアのバッシュがついたストラップ。 小さなバッシュには青いラインが入ってたりして、結構精巧に出来てて。 私のものじゃないのに、すごく気に入ってる。 私はいつもこれを制服のポケットに入れて持ち歩いて、お守り代わりにしてた。 お昼の時に見てたりするけど、それを玉置くんが見てたみたい。 「でも……遠くから見て、これだって分かるのかな……」 お互い屋上でお昼を食べてるとはいえ、結構距離は離れてるのに……。 それにこんな小さなもの、遠くから見て分かるのかな。 でも、玉置くんって視力が良さそう。 『ほら美雨ーっ、早くしないと冷めちゃうわよー。』 「は、はーいっ」 呑気に考えてる時間はなかったんだ。 大変、遅刻しちゃう。 慌てて制服に着替え、部屋を出ようとして、はっ、と思い出して。 ――私の宝物、バッシュの付いたストラップ。 「……忘れるところだった。」 いつも制服のポケットに入れて、お守り代わりにしている。 泣きそうになっても、これがあるから私は泣かないで済む。 ――『泣くな』って、あの男の子が言ってるような、そんな気がするから。 .
/403ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加