99人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前に立っていたのは、色素の薄い髪の男の子。
「……早川くん!」
「ははっ、おはよ。」
それは満面の笑顔を浮かべた、早川くんだった。
「び、びっくりした……」
「何か眠そうだったから、驚かしたくなってさ。」
「驚かしたくなって、って……」
驚かさないで、普通に声を掛けて欲しい。
やっぱり、人気者のやることは違うのかな。
「…そういえば、今日は、玉置くんと一緒じゃないの?」
ふと、昨日は玉置くんが一緒だったことを思い出して。
すると早川くんは、何故かにっこりと笑って、
「あー、俺、置いてかれた。」
と、笑う顔とは裏腹に、悲しそうな声で答えた。
「え…?」
「何か朝いきなり電話あったんだよ。『先に行く』って、それだけ言って切られた。」
「玉置くん、勉強も委員会も忙しいからじゃ……」
「でもあいつ、別々に行く時はいつも前の日の夜には言ってくれるんだけどな。秀司のやつ、そういうとこはしっかりしてるからさ。」
「そうなんだ……。」
……いいなあ、お互いを分かってる関係って。
本当の自分を知ってもらえるのって、きっと嬉しい。
相手の良いところも、悪いところも。
全部隠さず言っても、笑って許せるような関係が、ずっと羨ましかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!