第3章

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『まもなく、三番線に電車が参ります。黄色い線の内側まで、お下がりください。』 ホームにアナウンスが響き、周りの人達が動き始める。 それは私や早川くんも例外じゃなくて。 「ほら、美雨ちゃんも電車乗るっしょ?だったら早く行こうぜ?」 「あ、うん。」 人が多いから、いつもより乗るのが大変そう。 押されたりされたら転んじゃいそうで不安。 「――あ、電車来た。」 早川くんのその声に、私はカバンを肩に掛け直して、乗る準備をする。 電子音と共に、ドアが開いて。 吐き出される乗客の中をかき分けて、ドアに向かう。 「――おっと。」 「あ…すみませんっ」 すれ違う人とぶつかったりして、なかなか前に進めない。 でも、強引に突破する勇気は私にはなくて――。 「――何やってんの。」 「え? ――きゃっ」 耳元で誰かの声が聞こえたかと思うと、ぐいっ、と手を引っ張られて。 そのまま手を引かれ、電車のドアに向かう。 ……あれ? 人混みの中をどんどん進んでいくその背中が、見覚えのある背中だと気づいた。 .
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