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混み合う電車に何とか乗ると、電車はゆっくりと走り出す。
いつの間にか握られていた手は離されていた。
そして、私は目の前にいる、私に背を向けて立っている彼に目を向ける。
背が高くて、背筋がすらっとしてて。
昨日の夜、見たばかりだ。
「……あの、玉置く」
「――あっ、美雨ちゃんやっと見っけた!」
玉置くん、と名前を呼ぼうとしたのに、背後から掛けられた声に遮られた。
声のした方を振り返ると、人をかき分けながら、早川くんがこっちにやって来ていて。
ようやく私の前にたどり着いた早川くんは、ふう、と一息。
「後ろにいたと思って振り返ったらいないから、探したよ。」
「ごめん、色んな人にぶつかっちゃって……」
「この時間は乗る人いっぱいなんだから気抜いちゃ――…って、は? 秀司?」
やっぱり早川くんも、私の傍に立っているのは玉置くんだって気づいたみたい。
幼馴染みじゃ、間違えるはずもない。
「……うるさい。」
不機嫌そうに眉を寄せて、玉置くんはようやく、ゆっくりとこちらを振り返った。
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