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あんな風に、男の子に軽く触ったりなんて、あたしには出来ない。
話したこともないのに、触るだなんてこと……。
「……あれ、光輝の悪いところ。」
不意に傍で聞こえた小さな声に私は振り向く。
さっきまで私に背を向けていた玉置くんが、顔だけを動かして、早川くんを眺めていた。
「悪い、ところ?」
顔を見上げるようにして、そう訊ねると。
玉置くんはちらっ、と一瞬私のことを見下ろしてから、
「どの女子にも平等に接しようとする。でも悪いところというよりは――…ゴホッ、ゴホッ」
「だ…、大丈夫っ?」
話の途中でいきなり咳き込んで、私は慌てて顔色を窺う。
玉置くんが顔を見せなかったから気づかなかったけど、少し顔色が悪い……気がする。
そういえば、さっき手を取られた時も、手が少し熱かったような……?
「……大丈夫。」
ぱっ、とまた顔を逸らされて。
窓の外を眺め始めるその横顔を、少し観察するように見てみる。
……本当に、大丈夫なのかな。
咳が出てたけど、マスクとかもしてないから、ひどくはないんだろうか。
表情から探ろうとしても、クールな彼は表情を崩さない。
優等生らしいその佇まいは、いつも見ているものと何ら変わりはなかった。
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