第3章

10/32
前へ
/403ページ
次へ
* * * 『○○駅、○○駅』 私と同じ制服を着た、うちの学校の生徒で、ホームはごった返していた。 私が登校するのはこの時間帯じゃないから、こんなにうちの生徒で混んでるところは初めて見る。 ……正直、人混みは疲れる。 昔から出掛けることが少なくて、あんまり人混みが好きじゃない。 だからわざわざ登校時間を早めてるのに、今日の私ったら……。 「ほら美雨ちゃん、また置いてっちまうぞ。」 「わっ」 いきなり背中をぽん、と軽く叩かれて驚いた私は、思わず身体を強張らせる。 「人に流されちゃうから、気をつけないと。」 「…今度は大丈夫だもん。」 行動が遅いって言われてるような気がして、何か嫌だった。 集団行動は、確かに苦手ではあるけれど。 「……遅れるぞ。」 立ち止まってた私達を、玉置くんが追い抜いていった。 スタスタと涼しい顔をして歩いていく彼の後を、私と早川くんは慌てて追う。 ……ていうか、今、気づいた。 私、一緒に学校まで行って良いのかな。 私みたいな地味な女子が、あんなにもカッコいいと有名で人気な二人と、一緒に登校なんて。 ……いやいや、ダメダメ。 だって、もう既に――…。 「…ねえ見て、早川くんと玉置くん、一緒に登校してるよ!」 「ホント二人ともカッコよすぎるよね~」 「早川くんの制服の着崩し具合がいいよね?」 「ええっ、玉置くんのネクタイの似合い具合の方がいいよ?」 ……あの視線の中を、一緒に歩いてたら何て言われるか。 .
/403ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加