第3章

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「いらっしゃいませ~」 レジの店員さんに買う物を手渡して会計をしている間に、カバンから財布を出して。 「220円です。」 「あ、はい。」 220円ピッタリ渡して、レジ袋を受け取る。 「ありがとうございました~」 明るい挨拶を聞きながら、コンビニを出ると。 「――!」 出入口のすぐ横に人が立っていて、ちょっとびっくりした。 ――と、思ったら。 ふと、足元に目が留まって。 すらっとしたその長い脚に、見覚えがあった。 誰だっけ?と思い出しながら、顔を上げてみると――…。 「――えっ、た、玉置くん?」 見てみれば、そこに立っていたのは、何故か玉置くんだった。 ……さっき、早川くんと一緒に先に行ったはずなのに。 「ど……どうして此処に?」 「買い物しに来ただけ。」 手に持っていたレジ袋から、私に見せるように出したのは。 「……マスク?」 もうすぐ暑くなるのに、どうしてマスクを? 玉置くんはマスクの袋の封を切りながらも、何も言わない。 マスクを買ったってことは、風邪でも引いたのかな。 「――!」 そこまで考えて、ようやく思い当たった。 玉置くんは昨日、学校から私の家まで、濡れながら来たんだ。 ――私が、彼の傘を借りてしまったからだ。 .
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