第3章

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私が傘を借りたせいで、玉置くんはあんなに濡れて。 きっとあのせいで風邪を引いたに違いない。 「……ごめんなさいっ!」 私は深々と頭を下げて、とにかく彼に謝った。 ――でも、返ってきたのは。 「……なんで?」 という、たった一言だった。 「だって……私が傘を借りたせいで、玉置くんに風邪引かせちゃったから……」 悪いのは、私だ。 だからちゃんと謝らなくちゃいけない。 なのに、玉置くんはふいっ、と顔を逸らして、 「……別にいい。気にするな。」 と、ぼそっ、と呟いた。 「俺が勝手に貸したんだし、気にすることないだろ。風邪を引いたのは自分のせいだ。」 「でも……!」 すると玉置くんは、まだ何か言おうとした私を手で制して、 「……もう、いいから。」 黒真珠みたいな綺麗な瞳が、私を見下ろしていて。 私はそれ以上、玉置くんに何も言えなかった。 「――おい秀司っ!お前、いつも勝手にふらっと消えんじゃねーよ!」 なんて声が、遠くから聞こえてきて。 私と玉置くんが同時に声がした方を振り返ると、こちらに走ってくるのは、やっぱり早川くん。 さすが、バスケ部なだけある。 あっという間に私達のところにやって来た。 .
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