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「あー、あの制服って何中だっけ?」
思い出せない様子で、早川くんが首を傾げる。
「あっ、私の中学は」
「――北中、だろ。」
不意に口にされたその名前に、私だけじゃなくて早川くんも勢いよく振り向く。
「何、美雨ちゃんの中学知ってたの?」
早川くんに迫られて、玉置くんは鬱陶しそうな目を向ける。
……その質問は、実は私もしたかった。
私の通ってた中学は、確かに北中。
だけど、玉置くんに会ったり見たりしたことはない……と、思う。
だから私も気になって、玉置くんの顔を窺う。
「別に、制服見れば分かるだろ。」
「なんだよー、知り合いだったのかと思ったじゃん。」
「勝手に決め付けんなよ。それ、お前の悪い癖だからな。」
「お前が話してくれねーから、こっちは推測しなきゃなんねーんだよ。」
そんな二人の会話を聞きながら、私は密かに安堵していた。
もし、玉置くんが私のことを前から知ってたのに、私は知らなかった、なんてことになったら申し訳ない。
……でもまあ、知ってるわけないよね。
中学だって全然違うのに。
こんな地味な私と、玉置くんみたいな人が、話したことあるわけないもん。
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