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ただ見てるだけで何も言わないから、ちょっと不安になる。
鋭い目つきをしてるし、ちょっと怖い……んですけど。
すると玉置くんは、はっ、と我に返ったような目をして、目を逸らした。
「……早く行くぞ。このままのんびりしてると、また遅れて武本先生に怒られるからな。」
「げっ、急ごうぜ!」
早川くんが真っ先に駆け出して、その後に玉置くんがスタスタと足早に歩いていく。
玉置くんの歩くスピードは速くて、私の小走りとちょうど同じくらいの速さ。
二人から少し離れて、慌てて後を追った。
あんまり近くに寄ったら、周りの女の子から何を言われるか分からない。
もう学校内に入ったんだもん。
他校の女子ならまだしも、この学校の女子に見られたら……。
確実に、独りぼっちの私は――簡単に居場所を奪われる。
かろうじて保っている、クラスの中での、私の小さな居場所。
誰にも干渉されず、誰とも関わらない。私だけしかいない世界。
そんな、小さくて狭い、私の居場所を奪われたら、私は二度と立ち直れない。
またあの時みたいにあの人が助けてくれるとは限らないんだ。
私は頭を軽く振って、余計な考えを追い払う。
……暗いことを考えるのは、やめよう。
とにかく、急いで教室に行かなきゃ。このままじゃ私も遅刻しちゃう。
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