第三話 『祝  福』

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. 伸びていく指に、口に含まれる熱い感触に身体の芯が溶けるような感覚を覚えた。 ダメ、膝がガクガクして立ってられない。 その場に座り込みそうになった時、しっかりと抱き留められた。 「……まだ、倒れちゃ駄目。 ちゃんと立ってろよ、色んなことするんだろ?」 不敵に微笑みながら少し冷たくそう告げられ、ゾクゾクする。 「……エ、エッチなのは樹利じゃない」 息を荒くしながら恨みがましく睨んでみせると、 「そうだよ、知らなかった?」 と少し強引に後ろを向かされた。 すぐ目の前にある鏡。 言葉を詰まらせた可愛に、樹利はニッと笑って、 「今から嫌ってほど分かるよ」 背筋を指先で撫でたその時、 背後で「バウッ」とニュートンが吠えた。 二人がゆっくり振り返ると、ニュートンが皿をくわえて座っていた。 「…………」 二人は一瞬無言になり、そしてプッと吹き出すように笑った。
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