1人が本棚に入れています
本棚に追加
2日後。
愛珂は昇の葬式にいく事にした。
沈んだ気持ちで制服を着て支度を整え、玄関へ行った。
これは自分のせいなのか。少しずつ、葛藤は収まりつつも、未だに罪悪感を覚えたままだ。
実際、昨日の通夜へ行かなかったのは、その葛藤の結果が、「行くべきでない」と一時的に決まったからである。
にもかかわらず葬式に行くと決めたのは、気持ちの整理をつけるため。やはりこうするしかないと、愛珂は決めた。
靴を履いて、ドアを開けた。
郵便受けを何気なく見てみた。
手紙が入っている。
両親のどちらか宛てだろうと思い、封筒に書かれた宛先欄を見た。
『最愛の愛珂へ』
封筒の口を急いで切った。
恋人からの最初で最後の手紙が死んだ後に届くのは、皮肉であり、嫌味でもあったが、昇に対する激しい気持ちを、今はどうする事も出来なかった。
幾重にも折り曲げられた白い便箋が一枚。
『今頃自分は死んでるかもしれない。
でも、約束する。
最愛の愛珂を残したまま死んだりはしない。
手紙が届くのは1月21日。
一週間後、僕がどこにいるのか教えてくれないかな。
自分じゃわからないんだ。
どこに居るのか。
愛珂に会いたい。
岡崎昇』
手紙を見て固まった。
死んでから余程の月日が経っていたなら、少しは冷静になって、この手紙を読むことが出来ただろうか。今はそれすらも疑問だが、やっぱりもう抑えられない。
「あたしも会いたいよ…。昇…」
とっくに死んでいるなら、わざわざこんな手紙、最初から出す必要なんてない。
「会おうね。7日後に、絶対」
冷静さなんて、もうどこにもない。恋人を探すのに、「考える」なんて手間のかかった事なんか出来ない。
手紙を制服のポケットの中に入れ、葬式へ出向いた。
最初のコメントを投稿しよう!