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羽衣が前に出ると、観衆からざわめきが上がった。
「おい、まだガキだぜ。大丈夫なのかよ。」
「しかも相手は土方さんだぜ。あのガキもお気の毒に。」
しかし要は気にせず羽衣を見ながら微笑んでいた。
要「(羽衣が気の毒?気の毒なのは土方さんのほうね)」
そう思っていると試合が始まるようだ。
永「よし、じゃあ両者構え・・・、はじめ!」
その声を合図に土方は構えながら距離をとった。羽衣の方は竹刀を構えずにじっとしていた。
土「おい、構えないのか?」
羽「これが構えだから。気にしないで。」
土「そうか、じゃあいくぞ!」
その声と同時に土方は踏み出した。もう少しで当たると思った瞬間には、羽衣の姿が目の前から消えた。
土方が羽衣の姿をとらえようと前後に集中したが前後に気配はない。
どこにいる、と声を出そうとした瞬間、首の後ろに痛みが走った。力を振り絞って後ろを見ると、不気味に笑う羽衣がいた。そして、
「両親の敵。」
と小さい声で呟きながらとどめを刺そうと土方に近づく。
それを見ていた要はいち早く気づき、走った。羽衣が竹刀を振り落した。
パシッ
間一髪で要が間に合い竹刀で羽衣の一撃を止めた。そして、
要「羽衣、やりすぎだ。」
羽「うるさい。」
要はため息をついてから、羽衣の背後に素早く回り、首に手刀を当てた。その瞬間羽衣は正気に戻ったらしく、
羽「あ、またやっちゃったんだ。お姉ちゃん、ごめん。」
と言って羽衣は倒れた。倒れた羽衣を支え、狛にまかせると、土方の方へ行き、
要「大丈夫ですか?土方さん。すみません。羽衣がやりすぎたようで・・」
と謝った。
土「親の敵、とかいってたぞ?」
首の後ろをさすりながら土方は言った。
要「・・・。長話になるので場所を変えませんか?」
といった。土方は承諾し、
土「幹部全員、俺の部屋に集合してくれ。」
と、いい、道場を後にした。要は、
要「みんな、土方さんの部屋へ行くぞ。」
と言って狛から羽衣を受け取って道場を出た。隊士は誰もしゃべらなかった。
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