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トモは女性のとった行動に顔をしかめ、
溜息をつきながら空いたグラスへとお酒を注ぐ。
「ロマネは安い酒じゃ無いんだから、あまり一気しない方がいいと思うぞ?」
トモが若干呆れた表情を浮かべ、そう言った。
「いいの。
トモといれれば・・・それでいいの」
女性はトモの言葉に、目尻を下げ少し沈んだ表情でそう言うと、再びトモにもたれ掛かる。
そして、時間はあっという間に過ぎて行く・・・
「やっぱりトモさんは凄いッスね!」
と、茶髪でスーツを着崩した男が尊敬の眼差しをトモに向け、言って来た。
トモは今、ロッカールームという名の、荷物置き場にいる。
営業時間が終わったため、帰り支度を整えているのだ。
『うるさい』
トモのその一声で、その場の空気が固まった。
茶髪の男は、言われた事を理解出来ていないのか、目を点にし、その場で呆然としている。
その男に興味が無いのか、帰り支度を終えたトモは、ロッカールームの出口へと向かう。
未だ呆然とし、その場に突っ立っている男の脇を通り抜けて・・・
トモがロッカールームから出た数秒後、何かを叩いた様な音が何度か店内に響き渡った・・・
店を出ると、心地のいい風がトモの身体を擽り、初夏の始まりを感じられる。
今の時間は午前4時前。
もうそろそろ夜明けだ。
夜はネオンの光が埋め尽くし、人でごった返しているこの通りも、流石にこの時間になると何処か寂しい。
チラホラと歩いている輩もいるが、殆どが同業者。
それを見るトモの口から溜息が漏れる。
「ホスト・・・か」
そう言うトモの表情は冷たく、見る物を震え上がらせてしまう様な、そんな表情を浮かべていた。
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