第1幕 ~巻き添い~

3/12
前へ
/46ページ
次へ
トモは女性のとった行動に顔をしかめ、 溜息をつきながら空いたグラスへとお酒を注ぐ。 「ロマネは安い酒じゃ無いんだから、あまり一気しない方がいいと思うぞ?」 トモが若干呆れた表情を浮かべ、そう言った。 「いいの。 トモといれれば・・・それでいいの」 女性はトモの言葉に、目尻を下げ少し沈んだ表情でそう言うと、再びトモにもたれ掛かる。 そして、時間はあっという間に過ぎて行く・・・ 「やっぱりトモさんは凄いッスね!」 と、茶髪でスーツを着崩した男が尊敬の眼差しをトモに向け、言って来た。 トモは今、ロッカールームという名の、荷物置き場にいる。 営業時間が終わったため、帰り支度を整えているのだ。 『うるさい』 トモのその一声で、その場の空気が固まった。 茶髪の男は、言われた事を理解出来ていないのか、目を点にし、その場で呆然としている。 その男に興味が無いのか、帰り支度を終えたトモは、ロッカールームの出口へと向かう。 未だ呆然とし、その場に突っ立っている男の脇を通り抜けて・・・ トモがロッカールームから出た数秒後、何かを叩いた様な音が何度か店内に響き渡った・・・ 店を出ると、心地のいい風がトモの身体を擽り、初夏の始まりを感じられる。 今の時間は午前4時前。 もうそろそろ夜明けだ。 夜はネオンの光が埋め尽くし、人でごった返しているこの通りも、流石にこの時間になると何処か寂しい。 チラホラと歩いている輩もいるが、殆どが同業者。 それを見るトモの口から溜息が漏れる。 「ホスト・・・か」 そう言うトモの表情は冷たく、見る物を震え上がらせてしまう様な、そんな表情を浮かべていた。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加