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【御令嬢奪還】
その後、懇切丁寧に作戦の説明をされたわけだが、尾神は結局東京スカイツリーで時間をつぶし過ぎて作戦開始時間に間に合わなかった。
出来のいいパートナーのおかげで、所定の位置と別の場所からどうにか作戦に参加する事が出来たわけだが、どうにも場所が悪かったようだ。
「御令嬢のいる場所からかなり離れた場所に落とされたのか?」
『始めにセッティングした場所からのドロップアウトではなかったので、所定の場所から500メートル程離れた場所へ落とされた模様です。落とされた場所が陽動の御三方と反対方向であったことが唯一の救いです。そのおかげで……』
「あ~あ~、どうせ俺の責任だって言いたいんだろう。文句はいわねぇよ」
態度こそ変わらないが、インカム越しの説教の様な説明をこれ以上聞きたくないと話を打ち切った。
1キロ先、御令嬢が監禁されていると諜報がつきとめたビルを目指して街中を走る。
半壊したビル群、瓦礫や物騒な乗り物の残骸が捨てられた道路、不気味なまでの静寂さ。
まるで兵士が引き上げた後の戦争地域だ。
ただその景色に驚くのは初めて【こちら側に来た人間】だけだということを尾神は理解していた。
目標のビルに到達する直前まで来た頃には、遠くビルを挟んだ向こう側から爆発音や叫び声が聞こえてくるようになった。
陽動の3人か。俺もあっちの方が性に合ってるんだけどねぇ。
心の中で上司と3人の仲間を恨みながら走り続けていた尾神の足が目的地のビル間近になって止まった。
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