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数秒後、2人は無事に地上に立っていた。
物理的な法則を無視した出来事に驚く者はいない。
嫌な音を伴いエレベーターの扉が開いていく。
エレベーターの扉がこじ開けられ2人の男が現れた。
こじ開けた扉を抑えるスーツを着た大柄な男、その後ろには同じくスーツを着た細身の男がスーツケースを持って立っている。
「リア、時間がない。Mr.尾神にはここでドロップアウトしてもらう。装備を整えてください」
「了解。んじゃ、装備を受け取らせて貰おうか」
尾神は大柄な男の横を通り過ぎ、細身の男の持つスーツケースを開ける。
スーツケースに納められていたインカムを装着し、同じく納められていた拳銃をジャージの中にあるホルスターに仕舞う。
「杜鳥の御令嬢の安否を確保する為なら、なにしてもいいんだな?」
「【彼ら】は我々の組織と敵対する存在ですので問題ないと思われます。今回のミッションでの陽動は他の御三方に任せてあります。戦闘は避けていただきたいのですが、円華様の安否のためであれば制限は致しません。ただし、出来うる限り我々や彼らの正体について、円華様に探られぬよう配慮してください」
リアと呼ばれた女の返答に、不敵な笑みを浮かべて頷く尾神。
装備を整え最終確認を終えると、腰のホルダーに仕舞っていたサバイバルナイフのグリップを右手で強く握りしめた。
目を瞑り呼吸を整えていくと全ての音が遮断された。
聴覚だけではない。
視覚や嗅覚、触覚に平衡感覚、あらゆる感覚の信号が遮断さていく。
唯一右手からは、サバイバルナイフのグリップの固い感覚が伝わってくる。
どこにいるのか分からない虚無を彷徨感覚の中、ただ1つの光にすがる思いでさらに強くサバイバルナイフのグリップを握る。
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