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そうすること数分、次第に正常な感覚が戻り、宙を彷徨っていた足がしっかりと地についた。
瞼をゆっくりと開けると、そこは今までいた場所とは全く別の場所だった。
東京スカイツリー内ではない。
一変した景色を確認し、ホルダーに差し込まれたサバイバルナイフを握っていた右手を離す。
目に映った景色は人工的な光源がないせいか闇に包まれている。
徐々に闇に目が慣れ始め、辛うじて現在いる場所が屋外だということが分かった。
さらによく目を凝らすと見慣れた作りのビルや建物が立ち並んでいる事に気付いたが、どの建物も所々虫に食われた葉の様に原型が崩れている。
月明りと星々の乏しい光源で僅かにシルエットだけが浮かび上がり、異様な風景に余計な不気味さを付加しているのだ。
『無事ドロップを確認しました。目的地はそこから南に1キロ。尾神様の後方です。すでに他のメンバーが陽動を開始しています。陽動に加わらず杜鳥円 華様の奪還を優先してください』
尾神は返事も返さず、暗闇の中を走り出した。
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