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「醤油ラーメンお待ちどうさま」
会話が止まったタイミングで店員がラーメンを持って現れた。
話を聞かれたということよりも全く気配のない店員に驚きを隠せない2人。
「……」
黙々と麺を啜りラーメンを完食すると、2人は同時に席を立った。
「ところで、誰にも俺の行く場所教えてなかったのに、どうしてここにいるって分かったんだ?」
「勘です」
真顔で淀みなく言われたものだから反論が出来なかった。
「ありがとうございました」
お勘定を済ませて灼熱の炎天下へと出る。
昼時を過ぎたおかげかサラリーマンやOLが減り蒸し暑さは無くなったが、直射日光に照りつけられ額に汗が滲む。
涼し気な顔で汗ひとつかかないリアを恨めし気に睨み、まっすぐマンションへ向かった。
どこで誰が話を聞いているか分からない、ということでの配慮だ。
仕事の話をする時の為に用意した一室なので、決して2人が共に生活しているという訳ではない。
高級マンションの2LDK。
かなり値の張りそうな部屋に迷わず入室する。
必要最低限の範疇で部屋に用意された家具の1つであるソファーに行儀よく座り、リアが胸ポケットから小さな手帳を取り出した。
秘書の様なきびきびとした動きの固さに理由もなくため息がこぼれる。
「お前らプライベートの時でもその恰好だよな? 少しフランクになれないもんなのか?」
「申し訳ありません。我々はもとよりこのような教育を受けてきましたので」
「俺達と諜報じゃ、そこらの学校の馬鹿組とエリート組ほどの違いがあるってことか」
やれやれと肩を落とすと、リアが話し出すのを待つことにした。
その意思を読み取ったリアが手帳をめくる。
「隠匿された失踪者の11人目。その方の名は杜鳥円 華様。我々の組織をバックアップしてくださっている杜鳥グループの御令嬢です」
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