四月二十九日金曜日(昭和の日)

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1  人生というのは船旅に似ている。  歩き旅と唄われたり、決められたレールと蔑まれたりするけれど、僕にはこの例えがしっくりくるのだ。  歩き旅は安全過ぎる。命を奪われるような事はあまりないだろう。  決められたレールから外れることも、あまりに珍しいが故にセンセーショナルに扱われる。  その点、船旅というのはあまりに危なく、座礁転覆は大抵『付き物』として認識されている。  時化や凪、進めなくなる理由は沢山あって、一度外洋に漕ぎ出せば助けは期待出来ない。  計画性のない旅は、目的地に着くことなく終わりを告げるだろうし、どれだけ計画を練っても対応出来ない事は不意に襲い掛かる。  海を知る頃になれば、遠くへ向かうことを辞めて一つの港に腰を据える人の方が多い。  それぞれに思い描いた理想の港を目指し、僕らは漕ぎ出した。  そんな文句が人生にはよく似合う。  補給のつもりで立ち寄った港で恋に落ちたり、理想通りの港の現実は厳しかったり。  やはり、人生は船旅だ。  と、ここまでぐだぐだと考えてはみたけれど、僕の言いたいことはこんなことじゃあない。  素敵な台詞を言おうと頑張るなんて、僕のキャラクターじゃないのだ。  僕の一番言いたかったこと。  人生を船旅に例えたくなった理由はつまり。  人生も、船旅も。  揺れのせいで酔ってふらふらと足元が定まらなくなることがある、ということだ。
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