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「大丈夫です……今出ます」
僕の全てを受け入れて水に流してくれた便器に別れを告げ、壁に手をつき身体を起こす。
しかし、立ち上がるほどの体力はなく。
鍵を開けてドアを引いただけなのにふらついて便器に腰を下ろしてしまった。
「おいおい、どう見ても大丈夫じゃねえじゃん」
そう言うと、遠慮なしにノック男は個室の中へ踏み入ってきた。
「顔青っ! デスラーみたいになってんぞ、お前!」
騒ぎながら視界に入ってきた男は、僕の肩に手を掛けるなり失礼なことを言う。
「おい、総統。立てるか? それとももう少し吐いていくか?」
「…………いや、あの」
この男の中で僕の呼び名が『総統』になっている。
それは流石に恥ずかしいので止めていただきたいのだけれど……。言葉が見つからない。
「総統って言うのは止めてください」と言えばいいのかもしれないが、この男にそんな陳腐な言葉を掛けるのは躊躇われた。
異様な姿だ。
吐き倒していた僕の目がおかしくなったのかと疑いたくなるくらい変な奴だった。
びっくりして何なら少し気分転換になったくらい、変。
こんな奴に何を言えばいいのか。
迷わない方がおかしいと思う。
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