四月二十九日金曜日(昭和の日)

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 掛け値なく変な奴。  街中で擦れ違うことがあれば、目を合わせずに少しだけ避けて歩くこと請け合いだ。  髪型はサイドバック、後ろに流している左側は黄色(金ではない)と黒の虎柄に染められていて、目に掛かるように下ろされた右側の髪はライオンの鬣のような色とボリューム感。  心配そうな表情が浮かぶ顔はかなり整っている。目許は涼しげ、鼻は高いし唇は薄い。  服装は、赤いジャケットの袖を捲り上げ、半袖のように着て、白いシャツと黄色いネクタイ、黒いパンツ。  派手だ。  一つ一つが高そうな物なのに、船酔いでへばっているだけの僕の為、汚いトイレの床に膝をついている。  これぐらいなら原宿とかに居そう(偏見)なのだが、それだけがこの男の特徴ではなかった。  派手な服装も、困っている人間に手を差し延べる優しさも。  灰燼と化すような奇抜さが、彼の右腕にはあった。  丁度僕の顔辺り、肩に手を掛けられているので間近で見ることの出来る位置に――――その特徴はある。  アニメ風にデザインされた可愛らしいハムスター。それが、走り回っている。  どこを?  腕をだ。  誰の?  彼の。  そう。  何故かは分からないが、彼の腕には沢山のハムスターが縦横に走っている入れ墨が施されていたのだ。
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