無責任な僕と卑屈な彼女

はじめに

　人は簡単に死んでしまう。
　人はそう簡単には死なない。

　相反する二つの意見だけれど、僕はそのどちらもが正しいと思っている。

　人は簡単に死んでしまう。
　頭上に植木鉢が落ちてくる、手足を裁断機に巻き込まれる、車に轢かれる、ナイフで刺される。
　どんな方法でも、人間の命は容易く奪われてしまう。

　人はそう簡単には死なない。
　頭上に植木鉢が落ちてくる、手足を裁断機に巻き込まれる、車に轢かれる、ナイフで刺される。
　それらの出来事がその身に降り掛かることなど、中々あることではない。

　要は確率。

　生きるも死ぬも、全て確率に支配されている。

　僕はそんな風に思っていた。