溺れる声

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「…はあ」 キュッと蛇口を捻ると、勢いよく水が出る。 ジャーっと流れるその水に自分の心の中のモヤモヤも一気に流れてしまえばいいのに… ジャー 「ねー、流れる水見てボーッとするなんて病んでる?」 言葉とは反対にカラカラと笑いながらドアにもたれてこっちに立っているのは、同じ年の男。 「女性トイレ覗くって犯罪だよ?」 「そりゃヤバイ。ね、水もったいない」 人懐っこい笑顔で、『それ』と水を指差す。 「わかってる!今、戻るトコ」 大人げなく、ドンドンと足音を立ててトイレを後にする。 彼とすれ違う時、フワッとシトラスの香がした。
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