自暴自棄という字を飲み込んでみる

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「かぁごめ、かごめ……」  ぶちっ、ぶちっ。  そういえば、昼間に雨が降ったんだっけ。しっとりと露を含んだ青々しい白詰草は、土という土を見つけては際限無く広がっていく。  わたしはそいつらを無造作に、無感情に、引き抜いていく。  一本、五本、十本。  わたしの手のひらに新鮮な青草の匂いを残すという最期の抵抗を見せながらも、草は草なんだから、なんの抵抗も無くわたしの手によって細い茎をぶちぶちと折っていく。  ああ、なんてこいつらは可愛いんだろう。  四葉のクローバーとか言ってたまたまの変異体を喜ぶ浅ましい奴らめ。有象無象に呼吸する他の三つ葉は見向きもしないのか。くそッ。そんなに「普通じゃない」ことが大事?  ぶちっ。ぶちっ。  神社の本殿には、小さな小さな裸電球が灯っている。こんな時間に詣でる人なんているわけはないのに、古ぼけて錆びた大きな鈴を寂しく照らしているだけの役立たずめ。  そもそも、こんな町外れの、大きな桜の古木が立っているだけの神社に参拝者なんて普段からいない。なんてちっぽけな建造物。  わたしは手が伸びる範囲の白詰草をすっかりむしってしまうと、ほんの少し満足して手を止めた。誕生日に買ってもらったアンティーク調の腕時計を見る。  もうすぐで午前二時か。  知ってるわ、丑三つ時っていうのよね、この時間帯。前に江戸時代の転成物を書こうと思って資料を漁るように集めていたから、よく覚えているのよ。
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