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わたしは思い切って、白詰草のじゅうたんの上に寝転がった。背中がじんわりと湿る。普段なら皮膚がじわじわと濡れる気持ち悪さにすぐに飛び起きただろうが、今はそんなみみっちいことなどどうでも良かった。
こんな時間に、花の高校生ともあろうわたしがこんな裏寂れたところに一人で。もし彼氏なんかがいたら、大層心配することだろう。ぜひ心配でもしてほしいものだ、彼氏なんていうものがわたしに居るとしたら。
仰向けになったわたしの目に飛び込んでくる、まるでニセモノみたいな星の数々。
それは葉桜と重なり合って、宇宙の一部へ溶けてしまったかのような錯覚を覚えさせる。
「……綺麗だな」
わたしは思わず、素直な感想が口をついて出てしまった。
誰に聞かれているわけでもないのに、わたしは口を抑えてしまう。
――『お話を書く心は、まっさらでなくてはなりません。自分の中に浮かぶ世界を、素直に書き表す為です』
わたしの尊敬する大作家先生の麗しき言葉が、ぐるぐる、ぐわんぐわん、狭っちいわたしの脳内をスキップしてメガホンを使いながら大声で行脚している。
(うるさい、ウルサイ、うるさぁいぃッ!)
今のわたしにはオハナシだのセカイだの、禁句中の禁句です!
ばたばたと足をバタ足させ、耳を塞いでみる。しかし頭の中の大先生は止まることを知らない。そりゃそうだ。脳内で喚き散らす先生相手に耳を塞いだって、火をティッシュで消そうとする行為くらい無意味で愚かだ。
羞恥。羞恥、しゅうち、シュウチ!
屈辱だ!!
「――このような所行をする身にも、美しさは分かるのかね」
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