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どうして。
――不条理だ、不平等だ、不道理だ!!
小説のタイトルを見ても、「どうしてこれが」と思う作品がいくつもある。だってどう見てもふざけているとしか思えない。もちろん何度も一次、二次突破している常連の名前もちらほら見かけるが、やたらカッコイイ作者名の人達が綴る物語が、わたしの物語より優れているというのか。
わたしのあの小説は、わたしの愛そのものだ。青春を犠牲にして、いちゃいちゃラブラブと彼氏とプリクラなんか撮りに行く学友を遠い眼差しで見つめながら、毎日遅くまで机に向かっていた日々。
勉強だってまともにやらないわたしが、唯一の趣味とも言えるほど熱中している物語を。わたしの汗と涙とあとナニカの努力の塊みたいな、子供のような大切な作品が、劣っているというのか!
「――ああっ、もう!」
わたしは鬼の存在も忘れ去り、先程までむしっていた白詰草まで駆けつけ、再び仰向けに寝転がってやった。
星が、高い。
でも、届きそうなほど、近い。
小説の賞というのは、わたしにとってはあの星のよう。脳に焼き付くほど近い存在に思えるのに、手を伸ばしたら遥か遠くに逃げていく星々よ。
わたしのしていることは、無意味でしょうか。
あの星を虫取り網で攫っていくような、無謀なことなのでしょうか。
首を桜の方へ向ければ、鬼の足元に転がる、土でめちゃくちゃにボロボロとなった雑誌のページが。
鬼はゆったりとした動きで、相変わらず扇で口元を隠したままわたしの頭上から顔を覗き込んで来た。髪の毛の先がちくちくと顔にかかってくすぐったい。また扇でペチンをされるのかとファイティングポーズを構えたわたしの目に入って来たのは、呆れたような、冷めたような、そんな鬼の目だった。
「お前、小説家になりたいのか」
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