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その問いに、わたしは即答出来なかった。
否、数時間前のわたしなら即答していただろう。その夢のために今まで生きて来たようなものだし、諦めるなんて選択肢など存在しなかったのだから。
でも、心が折れてしまった。
何十時間、何百時間とかかってるの。他にない設定、味のあるキャラクター、巧みな表現。わたしの持てる全ての力を使って、これ以上にない傑作を造り上げたのよ!
あれが否定されるなら、わたしにはもう何もないわ!
「~~~っ……」
……ちがう。
才能なんか、最初からなかったんだ。
高校生の分際で、小説なんて難しいものに手を伸ばしたバツが当たったのよ。
情けない。
今まで睡眠時間を削ってまで、あんなに必死こいて、女のコらしいことひとつもしてこないで、その犠牲の果てにわたしは何を得ることができたんだろう。
悔しい。
わたしは結局、この世界のどこからも認められていない――
そう思うと、胸からこみ上げてくる涙を抑えることが出来なかった。
ファイティングポーズのまま、拳は震えて、目頭から熱いものがじわりと溢れてくる。きゅっと下唇を噛み締めて必死に堪えるけど、耐えれば耐えるほど「何に対して耐えているんだろう」という思考が働いてしまって、ぽろぽろっとこめかみへ流れる涙がひとつぶ。
「お前は、何を我慢しているんだ」
人外の鬼が、月明かりに優しく笑う。
「泣きたい時に泣かないと、心が泣くぞ」
その言葉に、わたしは。
せき止めていたものが決壊して、心が破裂した。
まるで子供に戻ってしまったみたい。わたしは鬼が見守る真夜中に、わあん、わあぁんと、思い切り泣きじゃくった。
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