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「痛ってーー。」
彼は苔の生えた岩肌に足を滑らせて、コケていた。
ゆっくりと地面に手を着き、起き上がりながら呟く。
「まったく、付いてないな……俺は。」
倒れた拍子にライトが地面に転がり、光が消えていた。
土を払いながらライトに手を伸ばし、掴む所で動きが止まる。
(――!? ……足音?)
足音が聞こえる。
光が二つ、樹木の隙間から見え隠れしていた。
腐葉土を踏み締める音が、一歩ずつ近付いて来る。
(ヤバイな……肝試しに来たやつか? それとも。)
息を殺し、身を潜めながら、入口で見かけた黒塗りのワンボックスカーを思い出す。
(俺を引き留めに来たのか?)
人が乗っているのかは確認出来なかった。しかし乗っていたのかも知れない。
(いや、案外死に神かもな。)
と、また余計な考えが頭をよぎると彼は鼻で笑っていた。
どちらにしても見つかるのは面倒だと、近くの大樹に息を潜め、やり過ごす事にしたのである。
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