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段々と近付く光と足音。
身を潜めていた彼は、近付く存在を確認しようと、大樹の影からこっそり切れ長の目を細める。
すると、二つの光は誰かを捜しているような動きを見せ、たまにその存在の足元を照らし出している事に気が付いた。
彼は細めていた目を見開き愕然となる。
迷彩柄だ。光が照らし出していた物は肝試しの若者では無く、恐らくだが自衛隊の人間である事を証明していたのだ。
思わず声が漏れそうになる。それを必死に堪えると、音を立てないように再び大樹の影に身を隠した。
更に、二つの光は接近して来る。
(何故こんな所にいるんだ! 本当に俺を捜しているのか!? 自殺を引き止めるにしても自衛隊はないだろ!?)
彼は眉間にシワを寄せ、緊迫する状況に鼓動を速めた。
もう手を伸ばせば届く距離まで接近されていたのだ。
緊張の余り、溢れる額の汗を右腕で拭い取ろうと腕を上げた――その時である。
足元がふらつく。
(――まずい!?)
ペキッと小枝が音を立てて樹海に響き渡る。
二つの光が一気に彼を襲って来た。
「人だ! 見つけたぞ!!」
「ヤバイッ!!!」
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