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木下がほれた女の娘をみていたらなんだか涙がこぼれそうになった。だから慌てて病室を出た。木下が追いかけてきた。
「高太!…そんなに危ないのか…」
その声に俺は立ち止まった。「危ない…のか…?」 木下はもう1度聞いた。 「早く移植しろよ…。」
俺は行こうとした。
「…駄目なのか…」
「…腎臓は…」
俺が聞くと木下は左右に振った。
「家族とか駄目なのか?腎臓は骨髄と違って確率が高いだろ」
俺はそう言って走った。
「貴子」
俺は貴子の背中に言った。 貴子は振り返った。
「病室に戻ってくれる?」 「なんで?」
俺の顔を見ながら貴子が言う。「話があるんだ」
貴子はまた俺に背中を向けた。「手術のこと?」
「あぁ」
「屋上じゃ駄目なの?」
「俺からじゃないよ。一条医師(いちじょうせんせい)から」
「あんたは?」
「俺は小児科の方の打ち合わせがあるんだ」
「あんたは手術に立ちあわないの?」
「立ちあわないよ」
「あんたって良い加減な男ね」
貴子はそう言い捨てて屋上を出て行った。
勿論手術のことも頼まれていた。でも俺は、何故かふみこんでいけなかった。
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