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「つきあいたいって手紙をもらったんだ。俺、すごい嬉しくて、すぐ返事をしようと思ったんだけど“恋"ってこんなに簡単で良いのか…とか考えちゃって…。…それで不安になった石原さんが、つきあいたいって言った高澤のところにいっちゃって…。…俺、すごいショックで、1番仲の良かった高澤のこと恨んだりしたけど、答えを出さなかった俺が悪い…って…。…俺…ちょうど入院しててイライラしてた。石原さんがやっぱり俺とつきあいたいって来たけど俺、ことわった。若かったからさ、高澤も大切だ、って強がって、その日の夜、景子の前でグジグジ泣いて…。景子…俺のこと馬鹿にしないで、黙って見守ってくれた」 俺は一気に話した。
「なんかよく分かんないけど、結局石原さんのことひきずってるんじゃない」 「ひきずってないよ。…愛した人が結婚するって、ちょっとさみしいだろ…」 「あんたって昔からバカだったのね」
「…あぁ…」
これは怒れなかった。
「そうやって景子さんのことも手放すの?」
「手放さないよ。愛してるから」
「…高…太…」
え…
振り返ると景子が立っていた。俺は貴子を見た。
景子はウィンクをひとつして、ドアの方に向かった。
「…俺…。…ごめんな…」 景子が首を横に振る。
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