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人生は楽しく過ごさなきゃ意味が無いって、誰かが言ってた。
その人は、その言葉に倣っているみたいに、いつも楽しそうに笑ってた。
僕は、“でも人生は、楽ばかりじゃありませんよ。”と返した。
彼は首を横に振った。
“『楽』と『楽しい』は違うぜ、若造。”
揚げ足を取られた気がした。
「喜ばしいことも、嘆かわしいことも、恐ろしいことも、全部それを楽しめばいいのさ。テメェは今、学生だな、勉強は嫌いか?」
好きではないです。僕はそう答えていたと思う。
「ハッ、日本人独特の言い回しだな。独特だけに毒々しいってか。同じ日本人として、笑えねぇ」
彼は笑っていた。
「若造、テメェが嫌いな勉強も、嫌いであるからこそ楽しいことがある。それを見出だせ、嫌いなものから好きなものを芽生えさせろ。人間ってのはそれが出来るから、素晴らしいんだろうが」
変なことを言う人だな。僕はこの時そう思っていた。
だが僕は彼のこの言葉を、いつの間にか自己解釈して、いつの間にか僕なりの考えにしてしまっていた。
嫌いなものから好きなものを見出だす。
否定の中から、肯定を。
本来はそういう意味だった筈のこの言葉を、僕は、履き違えていた。
僕が好きなこと──それはゲームだった。ゲームと名の付くものなら、テレビゲームでも、卓上ゲームでも、携帯ゲームでも、勝敗関わらず楽しむことが出来ていた。
だから僕はこう考えた。
──僕の人生は、ゲームだと。
否定から肯定を見出だすんじゃない。肯定を否定に押し付けて、強引に好きなことだと思い込んだ。
あの時の僕は、それが正しいと思っていた。
だからといって、今はもうそれが正しくない。とも思わない。
ある意味、それも正解だった。ただ僕にはそれが、次第に正解とは思えなくなってきただけで、正解はいくらでもあるし、不正解だって、いくらでもある。
それが、人生だ。
「だからな若造、人生を楽しむことが、唯一正しい生き方とは言わねぇ。メディアリテラシーって、習わなかったか? 情報を評価、識別する力のことだが。まぁ何にせよ、俺の意見は多分、少数派だろうからなぁ。一般的に間違ってるのは、俺だよ」
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