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彼は、自分の生き方を僕に語って、自分の生き方を笑いながら否定した。
でも僕は彼の言葉を信じた。
自分の都合の良いように改変して、信じた。
それは一般的には、信じることには入らないのだろうけど、僕の意見は多分、少数派だろうから。
だから僕は、間違っていたんだろう。
人生をゲームにしてしまうのは、確実に、絶対に、明らかに、明確な事実で、間違いなのだ。
もう一度言おう。
僕は、間違っていた。
.........
間違っていた頃の僕は、ゲームをあまりしなかった。
ゲームは好きだ。テレビゲームでも、携帯ゲームでも、オンラインゲームでも、ボートゲームでも、それこそ──人生ゲームすらも。
僕がゲームをしていなかった理由として一番大きいものは、やはり、今僕がいるこの現実が、ゲームなのだと認識していたからだった。
ゲームの中でゲームをする。そんなゲームはいくらでもあるが、大抵はメインシナリオからはかけ離れた、ミニゲーム程度のものである。
僕はそういうのにあまり興味が無かった。メインシナリオをクリアして、それで満足だった。やり込んだゲームなんて、ゲームは好きだけど一つも無い。
だけど、メインシナリオ上にそのミニゲームが組み込まれているのだとしたら、話は違ってくる。
例えば、部活動とか。
僕の所属する部活は囲碁・将棋部と言って、活動内容はその名の通り、放課後に集まって、囲碁か将棋、どちらかを帰宅時刻まで好きなように打っている部活である。
全くもって、無気力な部活だった。
僕がこの部に入部した理由は、囲碁も将棋も、括りはゲームだからだったが、他の部員はただの暇潰しとか、取り敢えず入っているだけとか、中途半端な人達しか居ない。
まぁ、僕もその中途半端な人達の中に入るんだろうけど。
その日、部室に最初に来たのは僕だった。
暇だったから、ロッカーから将棋盤を取り出して、一人で将棋を打っていること、三十分。
ガチャ──部室のドアが開く音だった。
「あ、またひとり将棋してるー」
入ってきたのは、部員の一人である、関目マキだった。
「遅かったね、何してたの」
駒を打って、横目で関目を見る。
パチ──王手。
「ん、友達と喋ってたらこんな時間になっちゃった」
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