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次の日は仕事が休みで、俺は街へ出た。 久しぶりに食材を買いに、大きなスーパーに入った。 ここには必要な物や欲しい物が揃っていて、俺は買い出しを済ませた。 それから荷物を持ってまた街を歩くと、いきなり手が軽くなった。 思わず後ろを振り向くと、そこには雄兄が居た。 『帰ってきてるなら、言えよ。』 『雄兄。』 『家は??』 『あっち。』 そう言うと雄兄は歩いていった。 しばらくして家に着いて、雄兄も中に入った。 『さぁ、話をしよう。』 そう言われて俺は雄兄の正面に座った。 『病院は??』 『明日行く。』 『どこ??』 『田口が居る病院。』 そう言うと雄兄はこちらをじっと見た。 『かめ。』 『...はい。』 『バケットリストを実現するために、来たんだよな。』 『うん。』 『山下くんには会うのか??』 『会わない。』 俺は即答してそう言った。 『会わないのか??』 『約束は守れそうにない。』 そう言うと雄兄は悲しい顔をした。 『それでも、好きなら会うべきだ。』 『会わない。』 『最低でも半年だぞ??』 『...。』 『頑張ればまだまだ生きられる。そのためなら、会うべきだ。』 そう言われて雄兄に手を握られた。 『...ごめん。』 そう言って俺は家を飛び出した。 足が進んだ先は、亮チャンの店だった。 『かめ。』 中に入ると、すぐに亮チャンと目が合った。 『亮チャン。』 『今日、ぴぃが来るんや。奥に行っとき。』 『いや、帰る。』 『せめてぴぃの顔だけでも見とき。そしたら、かめのその表情も少しは晴れるさかい。』 そう言われて俺は黙って頷き、奥に入った。
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