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「お待たせっす」
青いツナギを着た鑑識さんが来ました。
彼は春椹博司(はさわら ひろし)さん。
年齢は26歳、大輔さんや契一さんと仲が良い鑑識さんです。
「呼び出しちゃってすみません」
僕は平謝りしました。
「いつものことっすよ」
博司さんは笑って許してくれました。
「事情は契一さんに聞いたっす。アパート火災っすね?」
「はい、詳細を伺いたいです」
僕は事故の経緯を尋ねました。
朝7時半頃、近所の住人が、アパートの窓に炎が上がっているのを確認しました。
通報で駆けつけた消防さんが消火活動をしましたが、現場で黒焦げの死体を発見したそうです。
死体はその部屋の住人、上村徳久(かみむら とくひさ)さん、26歳。
死因は灰を吸い込んだことによる窒息死。
現場は玄関、窓すべてに鍵が掛かっていて、完全な密室。
火元は枕元の灰皿付近と判断され、警察は寝タバコが原因の火災事故として、捜査を行っていないそうです。
聞いた感じは完全に寝タバコ火災です。
僕はもう少し穿った質問を投げ掛けました。
「上村さんの職業は?」
「水商売、いわゆるホストっすね」
博司さんが、捜査資料を確認しながら答えました。
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