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「クロノス!」
見渡す限り地平線の広い草原で声があがる。
「聞こえているよ、バルト」
クロノスと呼ばれた青年はそう答える。
肩まで伸びた銀髪を風になびかせてクロノスは振り向く。
真っ白だったローブは戦いの名残りでボロボロだった。
「大戦が終わりました!」
「うん。頭の悪い神族と魔族の戦いがやっと終わった。勝手にこの世界で戦争を始めて、決着は引き分けだなんてね。」
「これで・・・平和に・・・やっと平和に!」
「そうだね。きっとこれからこの世界は平和になる。」
「早く行きましょう!みんなが待っています!」
「うん・・・。でももう少し・・・。もう少しここに居たいんだ。バルトは先に戻っててくれるかい?」
「わかりました。しかしあまり長くは待たせないでくださいね。あなたが平和のはじまりを皆に伝えてください。」
クロノスは微笑んでからまた空を見上げる。
バルトと呼ばれる青年は他の者達が待つ場所へとゆっくり歩いていく。
これが7人の王をまとめる王、つまりは全ての人間を統べる王クロノスを見た最後だった。
彼はこの時から忽然と姿を消してしまった。
後にこの世界はクロノスを除く6人の王が各地に散り、国をつくり秩序を保っていく。
それからおよそ5千年。
ここはとある大陸にあるバルトという国。
首都から東へ離れた港町『コーリス』
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