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教室の中では、スクリーンに映像を流しながら、男が何かを説明していた。
「これはメディスという」
男はそういいながらスクリーンを指さすが、スクリーン写っているそれは、何か動物のようにも見えるが明らかにそれではない。
動物というよりもそれは、妖怪のようであった。
「これは俗に妖怪と呼ばれているが、江戸時代に繁栄していた妖怪とは全然違う!
メディスは更に獰猛となり、腹を空かせては人間を襲うようになった。」
男はこう言ったが、こんな話を聞いて信じる人などいるはずがない。
しかし、聞いている者は黙って聞いている。
「君達は……一度メディスに襲われているね」
椅子に座っている皆が頷いた。
思い出しただけでも体が震える人もいる。
そして男はこう続けた。
「君達は幸運の持ち主だ。メディスに襲われたにも関わらず生き延びた。更に奴等の事も知り、そして……この組織に入れるんだからな!」
なにが幸運の持ち主だ。
なにが組織に入れるだ。
そんな事には全く興味なんてねぇ。
そう心の中で思っているのは、説明を聞いていた中にいる葉桜 紫苑(はざくら しおん)
彼は今日、メディスに襲われほんの一時間前に起きたばかりである。
葉桜は徐ろに手を挙げた。
「家に帰りたいんですけど。メディスとかいうのにもこの組織にも興味がないんで」
男は葉桜の方を見て答えた。
「そうか。だがしかし、今すぐに帰すわけにはいかない。君は襲われてから間もない。メディスは鼻がいいからすぐに見つけ出してしまうからな。」
葉桜は苦笑いを浮かべた。
言い返そうとしたその時、後ろから肩を掴まれた。
「帰っても構わねーぞ。死んでもいいなら……な」
そう言ったのは梶であった。
梶は、ニヤリと笑っていた。
葉桜は驚いた顔を見せた。
いや、葉桜だけではなく他の者も皆、驚きの顔を見せた。
それはそうだ。
葉桜だけではなく、ここにいる者は皆、メディスに襲われたばかりである。
死……
その言葉には皆が反応した。
「こらこら!あまり脅すんじゃないよ!皆が怖がってるじゃないか」
佐藤が梶に言い放った。
葉桜はそのまま何も言わずに、男の説明を最後まで聞いていた。
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