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「あれ……?」
ヴレドは体育館の扉を開け放った瞬間。頓狂な声をあげた。
それもそのはず。体育館はがらんどうで、入学式を行うような雰囲気などありもしないからだった。
ヴレドは、これはおかしい、と紺色の制服のズボンのポケットに手を突っ込む。
数秒、ガサゴソとポケットを探り、顔を青くする。
すぐさま、ヴレドは顔面蒼白でブレザーのポケットに手を突っ込み、その中を探る。
「ない…! 入学式の要項が書かれたプリントが……!!」
ため息を吐きながら、その場にしゃがみこんで頭を抱えるヴレド。
(マジかよ……。ここには誰も居ねぇし……。体育館なんかここ以外には……)
「―――ねぇ」
そんな時、高いソプラノボイスがヴレドの鼓膜を震わせた。ヴレドは、猛烈な勢いで頭を上げ、声の主を仰ぎ見た。
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