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遥か昔、およそ800年以上も前のこと。
世界は魔族と人間との諍いにより、混沌を極めていた。
人間は魔族を怖れ、拒み、魔族もそんな人間を蔑んでいた。
この二つの種は、共存することはない。
どちらかが滅びるまで争うしかないのだと、誰しもが思っていた。
しかし、その争いに終止符を打った二つの存在があった。
世界一の魔術師と謳われた男と、新たに魔族の頂点に立った魔族の男。
後に賢王、魔王と称されることとなる二人が、人間、魔族をそれぞれ纏め上げたのだ。
そして、当時まだどこの領地でもなかった北大陸の中心で、彼等はそれぞれの代表として和平条約を結んだ。
ゼリオスと呼ばれる土地にて和平条約が結ばれ、世界はゆっくりと、だが着実に戦火を沈めていった。
大きな歴史の節目となったその年を紀元と定めるゼリオス紀元が世界に伝わり、魔族と人間は、ゼリオス紀元1年に制定された和平条約によって良好な関係を保ち続ける誓いを立てた。
ゼリオスを挟んだ東側に賢王は自らを王とするフィンルド国を建国し、西側には魔王が王とする魔族の国アルガロッゾ国を建国した。
魔族は元来群れることをせず、誰かの下に付くこともせず、欲望のままに人間に害を及ぼしていたが、魔王にだけは逆らわなかった。
よって魔王は魔族をなるべく定めた土地に留まらせ、自らの目の届くところに置くために国を創った。
人間達も渋々それを国と認め、少数の国はフィンルド国を仲介としつつ貿易を始めた。
そしてその貿易で魔王がいかに優秀かつ良識な存在であるかを知ると、傍観していた国々も忽ち貿易を始めた。
ゼリオス紀元200年頃には世界は平和そのものとなり、その後大きな諍いが起こることはなかった。
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