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「誰だっ!?」
振り向いてみてもうっすら闇の中から細い白杖の先が見えるだけで相手の顔までは見えない。
見えなくとも、日常生活の上で白杖が必要な人間なんてこの山荘内では限られてる。ほっと安心して闇の中に声をかける。
「なんだ...シンヤか。」
「なんだってなんだよ。人をオバケ見たいに言っちゃってさ。で、どうなってるか、状況を分かる?」
心弥は悲鳴が聞こえてきたから、不思議に思って自室から出てきたらしい。
「いや、オレも停電してるせいで思うように進めないんだ。」
「成る程。取り敢えず、テルが立ってる所から2歩先が階段。」
そう言いながら、横をするりと心弥は抜けて行き、すいすいと階段を降りていく。
心弥にとっては、停電は問題じゃない。こういう時だけは不便に感じないだろう。
自分はかなり苦労しながら階段を降りきると、誰かがブレーカーを上げたのか、パッと電気が点く。
心弥の姿を探すと食堂の扉の前でノブを回す姿を見つけた。慌てて側に寄り、食堂内に目を動かすと、テーブルに項垂れるようにして絶命した大久保の姿があり、そのすぐそばに大久保婦人がぐったりと、机にもたれる様に倒れている。肩口がぱっくりと開いて出血が酷い。
「奥さん!?何があったんですか?しっかりしてください!」
オレは懸命に声をかけた。
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