ヒトメボレ

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莉野の在籍する5組は1から4組のある階の一つ上の階にある。 5組の生徒からすると、クラスが多い故に起こるちょっとした疎外感といった感じであろう。 該当の場所に着いた俺は、教室のドアを開けて目的の人を探す。 その人は友達と仲良さげに話していた。 あれ、さっきの初めて見た人...? 莉野の友達であったということに少々驚きながら、要件を伝えるため、遮るように名前を呼んだ。 俊「 おーい莉野!」 先程から名前はでているが、彼女は向田莉野。 高校2年の時に転校してきた彼女と同じクラスになり知り合い、色々経て仲良くなり、いつものメンバーとして付き合いを続けている。 よくヘタレと馬鹿にされるが、正直そんなことない。 吹奏楽部所属。 莉「わ!俊樹か! どうしたの?」 いきなり自分の名前が呼ばれたためか、肩をビクつかせながらこっちを見て答えた。 ヘタレじゃないと言ったこと、撤回。 俊「そんな驚くかよ。今日いつものメンバーでパーティーやるから、そのお誘いに来たんだ。」 いつもは「やったー!」と即答してくる莉野が、今日に限っては眉間にしわを寄せた。 莉「うそ、由依ちゃんと約束しちゃった…」 今まで莉野の口から聞いたことのない名前の子が挙がった。 俊「由依ちゃん? お前が自分から友達作れたっけ?」 莉「失礼な! 由依ちゃんも誘ったらそのパーティ来るかな...」 俊「いや俺は大丈夫だけど…」 そこで先ほどの「初めて見る子」の存在を思い出した。 俺が思い出した時とほぼ同時に、その子はこちらに来て口を開いた。 「今名前出された気がした!」 特に気にしていなかったが、今確信したことがある。 何故初めてすれ違った時に反応したか、簡単に言うとタイプだった。 莉「あ、俊樹、紹介する! こちら宮坂由依ちゃん!」 俊「あ、え、あ、よ、よよろしく」 やらかした、その一言に尽きる第一声である。 しかし慣れたようにそのだらしない挨拶にツッコミを入れながら返答をしてくれた。 由「いや噛みすぎでしょ!笑 宮坂由依です!」 ここで何かと勘ぐるのが向田という女だ。 俺はもう一度よろしくねとお辞儀をしてから、莉野の腕を引っ張って廊下に出た。 その光景を、由依は不思議そうに見届けることしかできなかった。
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