334人が本棚に入れています
本棚に追加
由「着いた!」
会話に夢中でどのくらい歩いたかは定かではないが、体感的にはそんなに経っていない内に、俺たちは由依の家の前についた。
俊「なるほど、デカい。」
ちょっとしたデジャブに陥る。
由「今日はありがとな。」
今までよりも少し低い声で言った。
由「正直転校は不安ばっかりなんや。だから俊樹が今日の集まり誘ってくれたこと、本当に感謝してる。」
いつもよりも真面目に語る由依を見て、少し自分も身構える。
俊「こちらこそ。 馴染めたみたいでよかったよ。」
由「おかげさまでな! ほなまた学校でな。」
由依が家の扉に手をかけようとする動作を見て、俺は反射的に声を出していた。
俊「あ、由依ちゃん!」
ドアに手をかけるのをやめ、頭にハテナを浮かばせながらこちらに振り返った。
俊「いや、良かったらなんだけどさ、連絡先...とか...」
自分自身、女の子に連絡先を聞くのは初めてではないが、今回はいつも以上に緊張している。
俊「いやその、これからも皆集まるしさ!すぐ呼べるように!ね!」
変な言い訳かもしれないが、この時の自分にとって少しでも悟られないための、苦し紛れの一言であった。
由「これからも誘ってくれるん!?」
疑うような身振りを見せずに、目を輝かせて言った。
よかった、この子ちょっと鈍感だ。
俊「もちろん!!」
由「めっちゃ嬉しい!ありがと! どう教えればいい? 」
俺は「アドレス言ってくれれば打つよ」と言いながら、電話帳の新規登録画面に飛んでいた。
由依もその言葉を聞き、ローマ字の1つ1つをゆっくりと伝え、確認していた。
俊「ありがとう! じゃああとでメールする! お疲れ様!」
由「バイバイ!」
由依を家に入るまで見送って、小さなガッツポーズをしながら自宅まで歩いている時には、23時を回ろうとしていた。
最初のコメントを投稿しよう!