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―日は流れ、5月中旬、体育祭前日。
時刻は18時半。
応援団は放課後練習として、各団別の場所でフォーメーションなどの確認を行っていた。
俊「じゃあ今日は終わり! 明日のためにゆっくり休んでください! 」
全ての練習を終えたため、俺は皆んなに解散の指示を出した。
皆「お疲れ様っしたー!」
定型文のようなお疲れさまでしたの声を聞き流しながら、衣装の上着を脱いでいると、集団の中から自分を呼ぶ声がした。佐絵である。
佐「俊樹、由依!一緒に帰ろ!」
俺とは少し離れた場所にいる由依にも聞こえるくらいの声で手招きをしている。
俊「おっけー、すぐ着替えちゃうね。」
俺はそう言って更衣室に駆け足で向かった。
団長のいなくなった校庭では、心なしか皆肩を撫で下ろしながら、のびのびと明日の実感を噛み締めていた。
莉「とうとう明日本番かぁ…」
1人、間延びした表情で由依に嘆く莉野。
期待よりも不安が優っているのが、表情、声、姿勢全てから醸し出ていた。
由「頑張ったんやし、きっと勝てるよ! 団長のおかげでちゃんとまとまったし!」
すかさずフォローを入れる由依。
しかし、莉野は入学式の日を思い出したかのように、少しだけ話題のベクトルをずらした。
莉「俊樹のこと見る目変わるでしょ、普段あんななのにこういう時なんかすごい気がする。」
由「見る目とかやないかもやけど、何かに熱中してるときは印象変わるなーって感じた!」
莉「本気になると人格変わるってバスケの人言ってたよ。」
人格が変わるというあまりプラスな意味に捉えられないような言葉を発して、一瞬脳内で「しまった!」と思った莉野だが、いい意味で裏切ってくれた。
由「そういうの素敵やと思う!」
莉「由依はん、さらっとすごいこと言うやん...?」
下手くそな関西弁でこれ見よがしに切り出す。
由「いや、そ、そういう意味やないで!」
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