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「ふぁ…んぅ…っ」
だんだんとエスカレートしていく
彼のキス。
「っ、やっ…」
どんなに顔を背けようと
胸を押し返そうと
やめようとしない。
キスは凄く強引で貪るようなのに
後ろで頭を支え、髪をすく手が
酷く優しいなんて、狡い。
強く、拒めない。
与えられる刺激と酸欠で
意識が朦朧としてくる。
ーーヤバイ…。
ーガクッ
ズルズルと膝から崩れ落ちる。
さっきとは違い支えてくれなかった
私を崩れさせた張本人は気にする様子もなく
一緒にしゃがみこみまた、キスの雨を降らせてくる。
「わっ……あっ!…まっ…」
待って。そんな一言も発せないまま
チュッチュッと啄むようなキス。
上唇を食べられたと思ったら
少しだけ歯をたてられる。
ービクッ
体の奥に何かが走ったような感覚に
目を見開く。
彼の口角が上がるのが
唇越しに伝わってくる。
その後少しして唇に私のそれと繋がる
透明な糸をつけ、離れていく彼。
ーカァアァ
なんだかひどく淫らに見える彼から
咄嗟に顔を背ける。
「…足りない。」
小さく、小さく呟かれた言葉に
彼の顔を見る。
ーーしまった
後悔したときにはすでに遅く、
彼の瞳にすぐに囚われる。
そのひどく穏やかで嬉しそうな
蕩けそうな笑顔に思考がショートする。
「やっと、こっち見た。」
「っっ!!!」
「いつからだっけ。
お前が俺の事見なくなったのは…。」
なんだかとても辛い過去を振り返るかのように
微笑む、彼。
そう。
彼の事を避けるようになったのは私の方。
ーーー……
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