いち。

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放課後、いつものように聞き込みを空振りに終えた私は、すっかり遅くなって人気(ヒトケ)のなくなった昇降口で靴を履き替えようとした。 その時ふと、今までに感じた事のない刺すような強い視線に、後ろを振り返った。 昇降口は吹き抜けになっていて、見上げると普通棟と特別棟を結ぶ廊下が見える。 そこに、うちの学校の制服を着た、でも一度も見た事のないとんでもない美形男子が私を睨むように立っていた。 ……睨むように、じゃなくて睨んでるし! それも…冷たく射抜くように。 まるで美術室の胸像のように、白く透き通った肌。 真っ黒な髪は肩より下まで伸びて、その艶やかさは遠目にもハッキリわかる。 少し長めの前髪の下から覗く瞳は星のない夜空のように真っ暗で、それが真っ直ぐ私に向けられて… 睨まれている事と美術品のような美しさとに、私は振り返ったまま暫く動けずにいた。 ……でも、長年の松ヶ崎先輩への想いが私の足を一歩、動かした。 .
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