1:プロローグ

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少女はゆっくりと扉を開いた。 その途端、立ち尽くしてこちらを見つめている少女と目があった。 しかし、少女は息をのむことさえしなかった。 ただ数歩足を進めると、手を伸ばした。 冷たく薄いガラスの向こうで、左右対称に映った少女が、同じように手をこちらに伸ばしていた。 風が素早く少女の前髪を揺らす。 黒目がちな奥二重の瞳、細い眉、スラリと伸びた鼻、皮のむけた唇。 それらがそこにあった。 毎日少女が見ている顔。もっとも見たくない顔が。
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