578人が本棚に入れています
本棚に追加
孝はベッドに寝転がり、ネクタイを外して放り投げる。
その様子を、少女は部屋の隅に立って、眺めていた。
身動き一つしない少女の顔は、ますます青ざめ、今にも倒れてしまいそうなほどだ。
孝に呼ばれても、身体をびくりと震わせただけで、それ以上動けそうにない。
しかし孝が渋々立ち上がって、乱暴に少女の腕を引くと、否応無しにベッドに倒れこんでしまう。
それから、つぎつぎとブラウスのボタンを外されても、彼女は何も言わず、顔を背けていた。
部屋の全てが灰色だった。
ただ、ベランダから覗く花の赤だけが色を保っている。
真理子は2人から目を離さなかった。
握り締めた手からは赤い液体が零れ落ち、床に小さな染みを作った。
最初のコメントを投稿しよう!