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気がつくと、真理子の手は目覚まし時計を握り締めていた。
コンタクトを入れていない、ぼやけた目を細めてみると、ちょうどベルが鳴ったはずの時刻だった。
全く覚えはなかったけれど、無意識にベルを止めていたらしい。
ずっしりと重い体を起こすと、部屋は薄暗かった。
カーテンを開けてみてもそれは変わらず、空一面に広がる厚い雲にげんなりした気分にさせられただけだった。
視線の先のマンションには、いつも通り植木鉢から濃い緑が覗いている。
しかし、なぜか花はなかった。
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